ペイント&コーティング ジャーナル

2006年08月07日記事より

技で拓く 「塗装店の挑戦」 
やらされる仕事より、やりたい仕事を 

有限会社 佐藤建装(大阪)

(有)佐藤建装(大阪市西淀川区、代表取締役・佐藤育夫氏)は“割れない壁”をつくることに執念を燃やす。そのため、ドライウォール工法を技術、理論の両面で積極的に習得。業者指名の物件が入るなど、ここに来て仕事量が増えてきた。しかし、その道のりは平坦ではなかった。

代表取締役 佐藤育夫氏

内装仕上げでドライウォール工法が国内に導入され始めた20年ほど前、テナント工事で現場を体験。「当時は設計もゼネコンも本当の意味でドライウォール工法を理解していなかった。単にエッジ幅が広いテーパーボードを使えば気密性が高く、頑強な壁を作れるのだと。従来のへベルボード(Vカット)と同じ張り方、目地処理をした上でペイントをするので当然、割れる。何度やっても割れる。そうした物件が続いた結果“やっぱりペイントはダメだ”となり、クロスなど張り物の普及につながった」と佐藤氏はターニングポイントを振り返る。

ここでの苦い経験は逆に、職人魂に火を付けた。「割れない壁をつくる」ため、当時はまだ少なかった文献を取り寄せて勉強。構造設計的な部分まで踏み込み、導き出した答えは「ボードの張り方とジョイント処理」。しかし、既に市場はクロス仕上げが主流。「塗装仕上げで割れない壁をつくる」思いは内包し続けることになる。

常にプラス思考

佐藤氏は「仕事への取り組み方、考え方の違い」から、所属していた塗装店を辞め、24歳のときに独立。とは言え、すぐに仕事があるわけではない。さまざまな伝を頼り、応援の形で貪欲に仕事の確保に走る。元来、技の習得にこだわりを持つ性格。「さまざまな現場を経験出来、いろいろな職人のやり方、アイデア、工夫といった技を盗むことが出来る」と、「飯のための仕事」であっても常にプラス思考。

 

そうした折、「父親から通勤のときに景気のよさそうな塗装屋を見たので一度行ってみては」と助言を受ける。「一緒に仕事をしていた弟と2人で早速出掛けた。すぐに仕事に入れるように仕事着、地下足袋、道具一式を揃えて、もうヤル気満々」な姿勢が通じたのか、「明日から仕事に来い」となる。
この会社では、佐藤兄弟の技術力、仕事に対する姿勢が認められ、常用であっても親方格の仕事と量を確保してくれた。そうして一息つけた平成元年、有限会社として会社登記する。

 

登記にはもう1つの理由があった。「仕入先の伝で、クボタホームテックのサイディング張りの仕事をすることになり、大企業相手という立場上、会社登記した」のがその理由。「外壁に無塗装サイディングが使われ始めた頃で、張り施工後の塗装まで貰えるのでは」と考えてエントリー。
「弟が、手先が器用なこともあり、サイディング張りという初めての仕事でもすぐにコツをつかみ採算ベースにすることが出来た」が、蓋を開けてみると「塗装に関してはクボタの従来からの協力会社が行い、自分たちに来るのは張りの仕事ばかり」で目論見が外れた。

 

採算ベースには乗っているものの、結局は下請け仕事で「将来に対する広がりが感じられない」ことから、2年ほどでこの仕事からは手を引いた。ただ、ここで「ボード張り」を経験したことが、その後のドライウォールの仕事に結果的に生かされることになる。

意匠技術を磨く

「他人が出来ないこと、していないことをやりたがる」のが佐藤氏の性分だ。外装で石材調仕上げ塗材が出始めた頃のトピックス。目的の意匠を出すための塗装仕様確立に各メーカーは苦労していた。佐藤氏もこの分野の主力メーカーに協力し、施工技術の確立に取り組んだ。「追い吹きではどうしても満足な意匠が出ない」ため、自ら多頭ガンを作るまでの入れ込みよう。「メーカーの試験施工から始まり、多分これまでに、セラミック(石材調)を大阪で一番多く吹いている職人」を自負する。

今でも仕事の2割ほどは石材調仕上げの仕事だが、佐藤建装に来るのは他社が手掛けた不具合のやり直しや、意匠合わせの難しい改修工事が多い。しかし、性格上、頼られることに自尊心はくすぐられている。
更にその後出てきた砂岩調塗材も「早い段階からコテの使い方をマスターしていたのでお手の物」で、ここでもメーカーの施工技術確立に一役買った。

 

コテの技術は仕事のバリエーションも増やした。砂岩調を始め意匠性塗材によるランダム、櫛引、エイシェントブリック、プラスターや珪藻土、更にベネチアンスタッコやフランス漆喰など意匠性の高い仕事が舞い込むようになった。

 

一方で同社は、オープンシステムに参画する。ハウスメーカーや工務店などを通さずに、こだわりの住まいを建てたいとする施主に対し、設計士が主体となって各専門工事業者に分離発注し、ローコストで良質な住宅を供給するシステム。
「塗装のプロとして設計士と対等な立場でやり合うので、ある程度設計にも通じていなければならない」と勉強。「その下地の作り方では負担が掛かり、絶対に割れるので構造の配置を変更すべき」など、現業に携わるプロとしての意見を理論的に武装出来るようにした。

 

そうした中から「高度な意匠、難しい仕事は佐藤建装へ」という流れが次第に定着。その延長線上で、再びドライウォールの仕事が巡ってきた。

ドライウォールを追求する

今から10年ほど前、輸入住宅が人気を得、住宅工法のひとつとして定着した。これらの施主にはこだわり派が多く、内装に関しては輸入住宅ならではの雰囲気を求めて塗装仕上げを望む声が多い。また機能面でも、ツーバイフォー本来の機密性にこだわり、北米で主流のドライウォール下地を望む声が高まった。

 

これに対し、ビルダーの多くは従来のへベルボード縦張りにジョイントは寒冷紗テープ+パテしごきというごく一般的な塗装工法で対応。というより、それがドライウォール工法との認識レベルであった。
クラックが多発したことはもちろんだが、本来のドライウォールを望むこだわり派の施主との間に当然ギャップが生まれた。

 

そこで佐藤建装へ仕事の依頼が舞い込む。佐藤氏はまず下地づくりに徹底的にこだわった。「4×8フィートのテーパーボードを使って横張りとし、ジョイントが十字にならないよう千鳥張りにする。特にクラックの出やすい開口部はジョイントを避けるため、全面を覆って、後から開口に沿ってボードを切り抜く」のが基本。その後、ジョイントのパテ処理をすべて終えた上で、幅木やケーシングなどの造作が入る。

 

これに戸惑ったのはビルダーや大工達だ。ボードの種類や張り方がこれまでとは全く違う上、工程も異なり調整が大変。このため同社はボード張りの仕事まで行うようになる。「サイディングの仕事をしていたので、訳なく出来た」と以前の経験がここで生きた。また、ボードを張る際は「ジョイントでほんの1~2mm隙間を空けて張るのがコツ。そうすることで、パテがボードの裏側に回り込みサンドする形になるので、頑強さが増すから」と、ここでもアイデアマンの本領を発揮。

ジョイント処理に関しては、入り隅や天井との取り合いを含めて、ボードの継ぎ目にはすべて、紙テープとコンパウンドが同時に出てくるバズーカと呼ばれる専用器具で1回目のパテ処理。続いて金ベラで気泡を押し出すとともにテープを圧着。和紙がなかなか手で千切れないように、紙テープは通常のメッシュテープに比べ、せん断に強い。これもドライウォールの強さの秘訣。

その後、仕上げのテクスチャーに応じて2‐3回の仕上げパテを施し、「割れない壁」の下地作業がようやく終了する。大工の造作を経てペイントに移るが、仕上げは「色のバリエーション、濁りがない」ことを好み、ICIデボーやベンジャミンムーアなどの海外製を使う。ここで作業は終了となるが、実に仕事の8~9割は下地づくりに費やされる。当初はビルダーや大工との軋轢もあったが、粘り強く、理論的に説得を続け、今ではボード張りや、ドライウォールのために優先的に工程を調整してくれるなど、環境も整ってきた。

 

あるときこんなことがあった。同社のホームページを見たという施主から連絡があり、一度会うことに。その施主はカナダから部材を個人輸入して住宅を建てたいというほどのこだわり派。当然、本物のドライウォールでということになる。会った翌日に電話があった。「近日、部材の買い付けにカナダに行く。費用は持つので、本場のドライウォールを確認してもらうため一緒に行ってくれないか」との連絡。

 

「海外旅行はおろか、飛行機にも乗ったことがない」佐藤氏は慌てた。急遽パスポートを作り「一度しか会ったことがないのに、信じて付いていって大丈夫か」との不安を抱えながら同行。しかし、本場のドライウォーラーの仕事を見て「自分たちのやり方の再確認と、彼らよりも仕事が丁寧」なことを確認出来、自信を深めた。

 

佐藤氏は「スッキリとしながらも上品で柔らかい空間をつくれるペイント仕上げの壁に惚れている。メンテナンスは施主がDIYで行い、リーズナブルに上質なインテリアを楽しんでもらう」のが理想。「そのために、プロが割れない壁をつくる」のが持論だ。

 

佐藤建装は「弟、息子、社員を含めて4人」と規模は決して大きくない。しかし、「やらされる仕事よりも、やりたい仕事」のスタイルを堅持するためには「自分の目が届き、確実に意思疎通が出来るこの規模が妥当」との考えがある。「このスタイルでコンスタントな仕事量を確保するのが課題。しばらく仕事が空くと胃が痛くなる」と本音もチラリ。
http://drytech.jp/

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